おすすめ本紹介

第57回白山祭の企画として、おすすめの本の紹介をしています。
本との出会いは一期一会。誰かから紹介されなければ一生出会えない本もあるかもしれません。
来場してくださった皆様に、新たな本との出会いがありますように。

selected by Nuuu

『珈琲店タレーランの事件簿 また会えたなら、あなたの淹れた珈琲を』

 著者:岡崎琢磨

 出版社:宝島社文庫

 出版年:2021

良いコーヒーとは、悪魔のように黒く、地獄のように熱く、天使のように純粋で、そして恋のように甘い。《シャルル=モーリス・ド・タレラン=ベリゴール》

アオヤマは、ふと寄り道した喫茶店で理想ともいうべきコーヒーに出会った。それをきっかけに、そのこのバリスタ"切間美星"との何気ない会話が始まる。しかし、同時に彼らの下に探偵のような依頼が次々に舞い降りてくる。そして、それらの事件は次第に切間の過去にも繋がっていき、さらには……。
アクティブなミステリーとは異なり、香ばしい香りと共にゆったりと流れていくオシャレなミステリーです。喫茶店で広がっていく依頼人や友人といった人間関係の輪は、やがて”コーヒーのような切間”の過去への緒にもなっていきます。コーヒーの描写、登場人物、事件、全てを美味しくいただける至高の一品です。

是非、お読みになる際には片手に淹れたての珈琲を。

selected by 月村 夕

『マリカの永い夜』

 著者:吉本ばなな

 出版社:株式会社幻冬舎

 出版年:1994

多重人格の人に出会ったことがありますか。もし。出会ったならばどう向き合えばよいのでしょうか。この作品は、下精神科医であるジュンコ先生と多重人格の「マリカ」がパリに旅行に行き、向き合いながら距離を縮めていく話です。

辛い過去を持つ「マリカ」の中には「幼児のペイン」「中年の婦人ミツヨ」「万引きや売春まがいのことをするのが問題点のハッピィ」「いつまでも十三歳のままのオレンジという少年」が中心としています。彼らはマリカを守りながら共存しているのです。少し不思議で、重く、でも美しい。そんなパリ旅行を一緒に体験できる物語です。

selected by 東郷氏春

『真夜中は別の顔』

 著者:シドニー・シェルダン
 出版社:アカデミー出版

 出版年:1973

時代は第一世界大戦後、2人の美女ノエルとキャサリンは互いに生まれ持った美貌と聡明さで社会でも着実に確固たる地位を築いていきます。

ノエルはかつて自分を弄んで捨てた男への復習のために、自分がされたように様々な著名人を弄んでのし上がっていき、キャサリンは厳しくも公正な代議士の元で経験を積んでいき、彼と将来を誓うようになるのですが、仕事で知り合った元米空軍パイロットのラリーと一夜を共にしたことで涸れに夢中になってしまい、即座に婚約してしまいます。

そのラリーこそが、かつてノエルを妊娠させて捨てた男だったのです。

ラリーは容姿端麗で第二次世界大戦で武勲を挙げた男でしたが、粗野な正確で、皿に武勲に拘るあまり戦後は就職と退職を繰り返していました。

一方ノエルは世界でも一二を争う大富豪のデミリスの愛人となり、ついに掴んだラリーの情報から、彼をデミリスの自家用機のパイロットとして雇うよう進言し、ついにそこでノエルとラリーは再会します。

しかし、女遊びを繰り返していたラリーはノエルを覚えておらず、ノエルの方はラリを見た瞬間、変わらないその逞しさに恨みを忘れて惚れ直してしまいます。

そうなるとノエルはラリーと結婚したキャサリンを当然よく思わず、彼女を殺すことを決意します。

そして、ノエルをできあいするデミリスは表向きは紳士ですが、実は彼女以上に残忍な男であることをノエルは知りませんでした。

ジェル段の作品は序盤に結末がぼかして書かれており、そこからそれに至るまでの過程を描くものが多く、先の読めない面白さに僕は焦りながらページをめくって読みました。

selected by 大津 翠

『ラン』

 著者:森絵都

 出版社:角川書店

 出版年:2012

家族を失った主人公はとある自転車に導かれ、亡くなったはずの家族が暮らしている異世界に紛れ込んでしまいます。やがて主人公は事情により自転車を手放すことになりますが、家族と会いたい一心で”あちらの世界”までの道のりを自らの足で走り抜く決心をする……というお話です。亡くなった人の、その先の世界での在り方がリアルで、哀しみを乗り越えて生きていくことの強さが感じられる物語です。

selected by 真舟 浹

『火のないところに煙は』

 著者:芦沢央

 出版社:新潮社

 出版年:2021

怪談の執筆を依頼された作家の「私」は、過去に友人に降りかかったとある現象について書くことを決心する。それは「私」にとって、今まで保留してきた思考の整理に向き合う行為だった。「私」が書いた小説が小説雑誌に掲載されると、知り合いの女性フリーライターから連絡が来る。聞くと、彼女もとある不思議な体験をしたという。そこで「私」は再び怪談を書く決心をするが……。

僕は超自然的な現象を目の当たりにした経験はありません。しかし超自然的な現象の噂なら何度も耳にしてきました。どれも眉唾物ですが、そういった噂としては幽霊やラップ音などの「心霊現象」の話が多いように感じます。この本ではそうした類いの噂話に焦点が当てられていたため、自分に身近なものとして読めました。